「概念を結びつけてゲシュタルトを作る」

ゴール(goal)

コンフォートゾーン(comfortzone

エフィカシー(self-efficacy)

 

といった、コーチングの中心概念が、以下の記事では登場する。

 

ゴールを設定するということは、現在のコンフォートゾーンとは違った新しくコンフォートゾーンにするべき情報を、内部表現(internaized representation)の中に作るという作業である。

その際には、現在のコンフォートゾーンが優位であろうとする力が必ず働くため、それに引き戻されないような力が内部表現の中にあると望ましい。

そこで、その力の指標として、エフィカシーという概念を用意する。

エフィカシーがあれば、ともすれば現在のコンフォートゾーンに引き戻されそうな際に、自分はゴール達成する能力があるという確信でもって対抗することができる。

 

いま行った説明は、三つの概念を結びつけて一つのゲシュタルトとして作ったが、取り得るゲシュタルトの形はこれだけではない。

むしろまだまだいくらでもあるだろう。

そのようなワークを常日頃から行うと、良い訓練になるだろう。

 

 

コーチングの理論で考える失敗しない転職の仕方

「そら」

 

私の実家には犬がいる。

気位が高く、難しいやつだ。

彼の名は「そら」という。

なぜそのような名前になったのかは不明だ。

コーチとして、彼の反応パターンを観察していると面白い。

 

・頭をなでると怒る

・怒ると噛み付くが、絶対に傷にならない程度におさめる

・こちらが横になっていると、顔をなめてくる

・出かけようとすると邪魔をする

・目覚まし時計の音にあわせて遠吠えをする

・誰も相手にしてくれないと、ねぐらに閉じこもる

・気をひくために、ティッシュを食べようとする

 

こんな感じだ。

 

彼は、人間のような言語運用能力と内省的意識を持たない。

よって、私たちが呼ぶ意味でのゴール(goal)を設定することもできなければ、無論、アファメーション(affirmation)を唱えることもできない。

それでもそれなりに幸せそうに見える。

それは、言語運用能力と内省的意識を持たないからこそなのかもしれない。

言語運用能力と内省的意識を持つ人間が幸せを感じるのには、ゴールとアファメーション(あるいは自分を変え続けるなんらかのツール)がそもそも必要だったのだろう。

コーチングを実践すればするほど、すでにある人間のマインド(mind)の精緻さに驚く。

コーチングの理論は説明として素晴らしいものだが、そもそもそれ以前に、人間のマインドが自然に持っている目的的志向(teleological)や、創造性(creativity)こそが素晴らしいのだと痛感させられる。

「ゲシュタルトの破壊と統合、そのスピード」

コーチング(coaching)にはゲシュタルト(gestalt)という概念がある。

いきなり余談だが、理論社会学(theoretical sociology)

にも同様の概念が重要なものとして扱われている。

といっても、理論社会学の枠組みの中では、ゲシュタルトという用語を使うわけではない。

定常システム(steady system)と呼ばれる。

この概念にはゲシュタルトと同様、「部分と全体が双方向的に織りなす全体」、「部分の総和は全体を超える」という含意がある。

定常システムという考え方は、70〜80年代に登場し、固まってきた考え方なのだそうだ。

心の学問が、行動主義(behaviorism)というパラダイムから、認知科学(cognitive science)関数主義(functionalism)へと変わってきたように、理論社会学の分野でも、均衡システム(balance system)から定常システムのパラダイムシフトがあったようだ。

 

さて、なぜゲシュタルトという概念がコーチングの中で用意されているのかと言えば、人間のマインド(mind)をゲシュタルトとして表現したいからだ。

部分と全体が双方向的に関わり合いながら、マインドを形成している。

そのマインドを変える、あるいは正しく使うことで、ゴール(goal)へと進んでいくことができる。

そのためには、過去接した情報の積み重ねによって出来上がった現在のゲシュタルトを破壊し、ゴールに向かえるように再構築しなければならない。

 

どのように破壊するのかと言えば、過去の情報との矛盾する情報を入れることだ。

コーチングでは、現状を超えるゴール設定(goal setting beyond the status quo)によってその機能が果たされる。

認知的不協和(cognitive dissonance)という概念がある。

人間は、二つ以上の矛盾する認識を維持できないという考え方だ。

認知的不協和があるため、創造的無意識(creative subconsciousness)が働き、矛盾した情報が入ってきたとしても、最終的にはなんらかの整合性を持った全体として安定状態に収束する。

このプロセスを、ゲシュタルトの破壊と再構築と考えることができる。

 

今回私が注目しているのは、ゲシュタルトの再構築までのスピードだ。

矛盾する情報が入ってきたとして、その情報もゲシュタルトの自然な一部として取り込む形に再構築するまでの時間は、何によって決まるのだろうかという問題意識があるのだ。

そこで、文章を書きながら考えていたのだが、ひとつはエフィカシー(self-efficacy)が関係しているのかもしれないと気がついた。

エフィカシーとは、「ゴール達成のための自己の能力の自己評価である」とコーチングでは定義されている。

確か、アルバート・バンデューラ(Albert Bandura)によると、エフィカシーが高く維持できている人は、困難な出来事に直面しても回復力が高いという記述があったような気がする(出典がさだかではないので確認する必要がある)。

これが正しかったとして、ゲシュタルトの破壊が精神の一時的な困難と考えれば、エフィカシーの高さが再統合までのスピードを決定する、と言えるかもしれない。

ただ、何か別の考え方もあるような気がする。

しばらく考えてみようと思う。

 

「お知らせ」

明日から年始にかけて、普段は行っていないトライアルコーチングの募集を行う。

同時に、コーチングセッションのキャンペーンも行う。

詳細は明日の夜に発行のメールマガジンの中で案内する。

興味のある方は、メルマガに登録していただければ、内容が確認できる。

 

「関係性」

状況を変えたいのなら、自分の内側を変えることからはじめよう。

現代では、そのためのアプローチの説明原理として、科学的に構築されたモデルが用意されている。

もちろん、コーチングの理論だ。

 

自分の内面を変えることに長けてきたら、次は、自分と距離の近い関係性を変えるという点に注目してみよう。

ひとつ上の視点を作る必要があるので、こちらの方が応用的かもしれない。

そういった観点から書かれた記事だ。

 

自分に自信が持てない人のための処方箋(発展編2)

 

「ゴールとエフィカシー」

コーチングでは、ゴール(goal)を設定するところから開始される。

多くの人は、ゴールは達成するために設定すると考えているが、これは正確ではない。

確かにそういう面もあるのだが、ゴールにはもっと重要な機能がある。

では、ゴールの機能とはなんだろうか。

ゴールの機能は、現在の人生を形作っているブリーフシステム(belief-system)の改変を促すことだ。

 

ゴールを設定することにより、その人のマインド(mind)の中で重要性(importance)の変化が起こる。

その結果、外界から入ってくる情報に変化が生じる。

なぜなら、外界から入ってくる情報は、マインドの中にある重要性に基づいて取捨選別されているからだ。

ちなみに、この取捨選別の機能面に注目した概念がRAS(reticular activating system)だ。

新しい情報は、これまでの重要性の中では知覚不可能であった、言い換えれば、これまでの情報となんらかの矛盾を引き起こすようなものだ。

すると、そもそも人間は統合的なゲシュタルト(gestalt)をひとつしか維持できないため(認識の矛盾状態を維持できないため)、それまでの情報と新しい情報との間で整合性がとれる認識を作り出そうとする。

その作用が、結果的に、価値判断のシステムであるブリーフシステムの改変につながることが期待できるのだ。

 

ゴールは現状の外側に設定しなさいと言われる。

これは、上記の文脈で考えるのなら、既存の重要性の埒外にある価値観に基づいて設定せよということである。

もし、それまでの重要性に基づいたゴールを設定したとしたら、いくらそれが「もっとも重要な」ゴールであったとしても、新しい情報は入ってこず、矛盾状態は起こらない。

矛盾状態が起こらなければ、ブリーフシステムは変わらず、コーチングのそもそもの目的である人生を変えるということができない。

 

さて、既存の情報と矛盾するような新しい情報に人間が接したとき、どのような反応が生じるのだろうか。

端的に言えば、苦しくなる。

おそらくこれは、人間が生体を維持するために安定的な状態を維持しようとするホメオスタシス(homeostasis)の作用なのだろう。

不安や恐怖、拒絶感や違和感を感じさせることで、新しい情報の受け入れを実際に拒否させたり、延期させたりする。

それでもそういった新しい情報を取り込み、意図的にマインドの中に矛盾を作り出すことが、人生を変えるのには必要であることは既に書いた。

ではその苦しさはどう乗り越えるべきだろうか。

そのために、エフィカシー(self-efficacy)という概念がある。

エフィカシーとは「ゴールを達成するための自己の能力の自己評価」のことであるが、この概念は相対的なものであることに留意してほしい。

つまり、何かしらの担保を求めるものではなく、自分で自分の能力を絶対的に評価する力であるということだ。

苦しいときに人は、やっぱり自分には無理なのかなと感じる。

これをあえて論理的な推論として記述すれば、

 

こんなに苦しい→続けられるはずがない

こんなに苦しい→自分には才能がない

こんなに苦しい→そもそも自分のゴールではない

 

この推論自体は論理的ではないのだが、苦しいが故にこういう短絡的推論に飛びついてしまう。

このような不完全ながらの推論や、あるいは、苦しいという状況そのものを脱構築するような、封じ込めるようなマインド内部での力学が必要になる。

そのためのエフィカシーだ。

つまり、

「確かに苦しい。無理な理由もいろいろと湧いてくる。でも自分にはゴールを達成できる能力があるはずだ。理由? そんなものはない。あえて言うならば、自分でできると決めたからだ」

こういう方向を持つエネルギーがマインドの中にあることで、正しいゴール設定の際に生じる苦しさを相対化していく力学が生まれるのだ。

「再録:ドリームキラー対策」

私は2015年の9月から、無料のメルマガを配信している。

 

 

その中では、コーチングを理解するためのさまざまな記事を書いてきた。

古い記事は、最近になってメルマガに登録された方は読めない状態だ。

「読みたい」という声をよくいただく。

そこで「再録」シリーズとして、加筆修正した古い記事をこちらのブログに少しづつ掲載することにした。

役立てていただけると幸いだ。

今回は「ドリームキラー対策」という話題だ。

 

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ゴールを設定し、それに向かって進もうとしているのだが、ドリームキラーに気持ちをくじかれてしまうという話をよく聞きます。

ドリームキラーとは、あなたのゴールを否定する人のことでした。

つい先日もそのような相談を受けました。

コーチングの理論に基づけば、ゴールを設定した以上このような事態になるのは当然のことです。

むしろ、正しくゴールを設定できているからこそ、ドリームキラーが現れるのです。

あなたが大きなゴールを設定すれば、過去のあなたとして接する周囲の人は、自分の居心地の良い空間を乱されたように感じ、あなたのゴールを否定するような行動をとるからです。

さて、そんなときにどうするべきかの一つの考え方として、ドリームキラーとは物理的な距離をとってしまうという方法があります。

日常接することがなければ、いかにドリームキラーといえども、あなたに強い干渉をすることはできません。

単純ですが、非常に効果的なドリームキラー対策と言えるでしょう。

また、このようなドリームキラー対策は、逆向きに考えて応用することもできます。

つまり、ドリームキラーから物理的な距離を取ればいいという考え方をひっくり返して、ドリームサポーターへと物理的な距離を近づけると考えるのです。

これに意識的に取り組むと、あなたのゴールへと進むペースは一気に加速することでしょう。

参考にしていただけると幸いです。

「前に言ったことがある」

「過去の自分の気づきを今になって主張する人」に出会うことがある。

 

「昔からそう思っていた」

「だから言ったじゃん」

「そんなことはもうすでに気がついていた」

「◯◯年前に同じことを思いついていた」

「以前から予想済みだ」

 

こういう主張はどんなふうに現れるか。

誰かが主張したことが広く受け入れられる状況が出てきたとする。

それに対して「素晴らしい気づきですね」という反応をする人もいるのだが、一方で「そんなこと自分は何年も前からわかっていた」という反応をする人がいる。

こういう形で現れる。

こういう後出しジャンケンみたいなスタンスは、あまり良い傾向とは思えない。

理由はふたつある。

ひとつは、なぜ過去に気づいていたのなら、それが現実に影響を与える様な形で伝えていかないのかだ。

ただの思いつきで終わらせるのではなく、伝える、実際に行動することをなぜしなかったのだろうか。

少なくとも、いま主張を広く受け入れられる人は、自分の気がついたことをただの思いつきで終わらせないための作業を行ったわけだ。

自分の気づきを、広く多くの人に受け入れてもらうために、工夫と対話を重ねたはずだ。

脳内で生じた気づきを、物理的な現実世界にまで落としてはじめてインパクトが生じる。

そのことがよくわかっているから、そういった作業を厭わず、じっくりと形にした結果、広く受け入れられる形の主張が生まれる。

それを見て「そんなことは自分はすでに気づいていた」というのは、やはり違うのではないだろうか。

ルー・タイスは、自らの基本三原則のひとつとして、effevtive(有効な)というものをあげていた。

これにはいくつか解釈があるのだが、コーチングの文脈における「有効な」とはどういうことだろうか。

ゴールを妄想するに終わらせるのではなく、現実に自分の人生を変えるということだ。

「そんなこと自分はすでに気づいていた」という人は、このeffective に対する重要性があまり高くないのかもしれない。

 

さて、もうひとつの理由は単純だ。

その「気づいていた」は、いま広く受け入れられていることと同じであるという保証がないということだ。

もっと言えば、本当に気づいていたのかどうかも検証できない。

論文や記録でも残っていれば別だが、そういうことでもないだろう。

つまり、単なる水掛け論になるだけであり、その「気づいていた」という主張自体が不毛であるということだ。

ここでもやはり effective ではないという結論が出てきた。

 

念のため言っておくが、実際に「そんなことは昔から気づいていた」という主張をしつつも、それが書籍や映像、論文などに残っていて、さらに、その気づきを広めるための現実的な行動をしっかりとやっている人はいる。

そういう人は、あえて「そんなことは昔から気づいていた」ということを美学、エンターテインメント、アジテートとしてあえて言っているはずなので、特に問題ないと考える。

「ゲシュタルト」

コーチングの概念にゲシュタルト(gestalt)という概念がある。

意味は、部分と全体が双方向的に関わり合いながら生じる、ある「まとまり」のことだ。

少しわかりにくいかもしれないので、例を出そう。

スターバックスコーヒーに行くとする。

スターバックスに行くと、様々なものが見える。

エプロンをつけた店員、フード、エスプレッソ・マシーン、椅子、照明、ガラス窓、メニュー表、、、

それらはひとつの店舗を形成している。

スターバックスという概念には、さきほどあげたような、目に見えるもの以外の抽象物もさまざま関わりあっている。

スターバックスの理念、コーヒー作りのノウハウ、人材育成のアプローチ、あるいは、スターバックスという企業に参加する人々のコーヒーを愛する気持ち、顧客の感じるハッピーなどだ。

いままであげた、目に見えるもの、目に見えない抽象物が相互に関わり合いながらスターバックスというひとつの全体を構成している。

このような全体をゲシュタルトと呼ぶのだ。

 

ところで、人間の精神もひとつのゲシュタルトであると言える

私たちの精神と呼ばれるもの、つなわち推論、意思決定、記憶、思考、知覚、学習といった認知活動すべても、総合してひとつのゲシュタルトと言うことができるということだ。

また、人間の精神は、五感を通じて情報を取り込みながら、そのゲシュタルト構造そのものがダイナミックに変容し続けている。

簡単に言えば、人間の精神は一瞬ごとに生まれ変わっているということだ。

 

数日前、大人向けのセルフコーチング(self-coaching)プログラムであるTPIE(Tice Plinciples In Excellence)を受講した。

そこで私が五感を通じてキャッチした情報はあまりにも巨大で、私の精神というゲシュタルトを思い切り揺さぶった。

ゲシュタルトを破壊されたといったほうがいいくらいかもしれない。

一度破壊された精神というゲシュタルトは、よほどのことがない限り、再統合(reintegration)される。

プログラム受講後から時間が経ち、少しづつ私のゲシュタルトが再統合されていっている感覚がある。

そして、受講以前には認識できなかったものが、認識できるようになっていることに気がつく。

これは当たり前の話で、ゲシュタルトの再統合は、破壊された際に入ってきた情報を取り込む形で行われるからだ。

比喩的に言えば、精神のかたちそのものが変わってしまう。

だから、新しい認識が生まれるのは当然のことだ。

もちろんその際に、どのような形で再統合されるかの方向性としてゴール(goal)が重要な機能を果たすことは言うまでもない。

ちなみに、パーソナルコーチング(personal-coaching)によって生じる効果も、同様の説明をすることができる。

 

 

いずれにせよ、私にとってTPIEの受講は本当に素晴らしいものだったということだ。

FT(ファシリテーター)、参加者のみなさん、そしてなによりプログラム開発者のルー・タイスと苫米地英人博士に感謝したい。

「初級・コーチングセミナー」

本日は、大阪でコーチングのセミナーだった。

内容は、コーチング理論を学び始めるにあたって押さえておくべきポイントとの確認と、コーチングを学ぶための様々なコンテンツを概観するというものだった。

我々の提供するコーチングを学ぶためのコンテンツはたくさんある。

書籍や映像はもちろんのことながら、プログラムや養成講座、あるいは実際にコーチングセッションを受けるなど、実に内容が様々だ。

コンテンツが豊富になっていくことは喜ばしいことなのだが、一方で、混乱が生まれるという側面もある。

それぞれがどのような内容と意義を持ち、自分にとってどれが相応しいのかがわかりにくくなっている。

事実「TPIEとPX2はどのように違うのですか」とか「苫米地式コーチングとパフォーマンス・エンハンスメント・コーチングはどう違うのですが」などという質問が増えている印象がある。

学ぶべきコンテンツが増え、興味を持ってくれている人が増えていることは間違いなくいいことなのだが、混乱を放置していては、せっかくの状況が悪い方向へ進むだろう。

そこで、コーチングを学ぶコンテンツを整理し、全体像を捉えようというのがこのセミナーの狙いだ。

そのための資料を作成し、それに基づいて順番に解説を試みた。

 

参加していただいた方はみなさん熱心で、鋭い視点をお持ちの素晴らしい方ばかりだった。

今日の内容を役に立てていただけると確信している。

 

年内の私のセミナーはこれで最後だ。

来年も、多くの人のために、たくさんの企画を実行していきたいと思っている。